著者は入間人間。『安達としまむら』で百合ラノベ界に革命を起こした、あの入間人間だ。その人がこのテーマで書く——読まない理由が見つからない。


どんな物語なの?

主人公は苺原樹(いちごはら・たつき)、二十代後半の既婚女性にして高校教師。夫もいて、社会的にも安定した立場にある大人の女性だ。

そんな彼女が、教え子の女子高生・戸川凛と出会い、気づけば抜け出せない関係になっていく——というのが大筋。

きっかけは”不憫だから気にかけた”という、教師として自然な感情だった。家庭環境に問題を抱える凛を放っておけなかった。ただそれだけのはずだった。

でも感情って、理屈通りには動かない。


入間人間が描く”感情の解像度”がやばい

この作品の最大の武器は、入間人間特有の内面描写の精度だと思う。

樹は”悪いことをしている”と分かっている。既婚者で、教師で、相手は自分より10歳も年下の教え子。道徳的にアウトなことは、誰より彼女自身が理解している。

でも、分かってるのに止まれない感情——それをこの作品はとことん丁寧に書いてくる。

罪悪感と恋愛感情が同時に存在している状態って、普通なら「どっちかにしてよ」って思うじゃないですか。でも入間人間はその矛盾を解消せず、矛盾のまま描き切る。その居心地の悪さが、逆にリアルで、目が離せなくなる。

「淫らで不貞で、でもどこかあたたかい」というキャッチコピーがあるんだけど、これが本当によく出来てて。読んでいると、確かにその”あたたかさ”を感じてしまう瞬間がある。そこがもう、ズルい。


凛というキャラクターについて

教え子・戸川凛も、単純な”かわいそうな女の子”として描かれていないのがポイント。

家庭環境に問題があるというバックグラウンドはあるけれど、それだけで語れないキャラクターとして存在している。樹が一方的に”溺れていく”だけじゃなく、凛もまた複雑な感情を持つ人間として描かれているから、この関係性に双方向の重みが生まれている。


こんな人に読んでほしい

  • 『安達としまむら』で入間人間の沼にハマった人
  • 道徳的にグレーな関係性の百合が好きな人
  • “正しくない恋愛”を正面から描いた作品を求めている人
  • キャラクターの内面をじっくり読ませてくれる小説が好きな人

逆に、ハッピーで健全な百合が読みたい気分の時は、ちょっと心の準備をしてから手に取った方がいいかもしれない。これは甘いだけじゃない、ヒリヒリする百合だ。


まとめ:タブーを”言い訳”にしない百合小説

この作品がすごいのは、「タブーな設定」を面白さの免罪符にしていないところだと思う。センセーショナルな関係性を扱いながら、それを感情の物語として丁寧に積み上げてくる。

人は正しくない感情を持つ。それでもその感情は本物だ——入間人間はたぶん、そういうことを書きたかったんじゃないかと読みながら感じた。

第2巻が2025年1月に発売済みで、続きが楽しめる状況も嬉しいところ。

タイトルで引いた人こそ、一度手に取ってみてほしい一作だ。